洗練された日経225ミニ
対象資産が主に不動産でありかつ発行証券も株式であるREITの形態は債権を対象資産に債券型の金融商品を発行するという他の証券化金融商品の形態とは異なっています。
しかしながらREITもまさに証券化の一形態であることに違いありません。
それどころか2000年の改正投資信託法の施行による日本版REITの解禁によりわが国でも不動産市場に資金の供給を促進し市場を活性化する有効な仕組みとしてREITは大きな期待を集めているのです。
住宅ローン債権のプールを対象資産とするMBS(モーゲージ証券)やCMO(モーゲージ証券担保債務証書)から始まった証券化は自動車ローンクレジットカードローンリースといった様々な債権へとその対象資産を広げ拡大と発展を続けて来ました。
もちろん証券化の手法はリスクをコントロールしながら対象資産のキャッシュフローを取引する仕組みの体系ですから何らかのキャッシュフローを生み出す資産でありさえすれば(現実には様々な困難があるものの)原理的には証券化か可能であると考える方が自然です。
こうしてそれまでは考えもされなかった資産が証券化され始めました。
その出発点が大規模白然災害に関する保険リスクを証券化するCAT債券、いわゆる保険リスクの証券化産やその手法を用いて取引するリスクの範囲に関わる既成概念を打ち破り証券化の新たな局面を切り開きました。
なじみ深いところでまず自動車保険を思い浮かべてください。
保険に加入すると毎月保険料を保険会社に支払わなければなりませんがその代わりに事故を起こして損害を被った(与えた)場合にはその損害をある程度補う額の保険金を保険会社から受け取れます。
火災保険生命保険その他どんな保険でも対象に違いこそあれ仕組みは同じです。
保険料を支払う見返りに保険加入者は損害のリスクを保険会社に移転する。
保険とはまさにリスクの取引なのです。
さて加入者のリスクを抱える保険会社はもちろんリスクのコントロールをしなければなりません。
その第一歩が証券化の第一段階の対象資産の構成でも威力を発揮したプーリングです。
自動車事故は一件あたりの金額が小さくかつ各々がそもそもは無関係に起こるはずのものですから加入者をたくさん集めてプールすれば大数の法則が働いてプール全体の平均的な損害のリスクを小さく安定したものにできます。
個人を対象とするその他の保険についても同様です。
さらに保険会社は保険のリスクのすべてを自分自身で抱え込まずに引き受けた保険リスクに保険を掛けることもします。
これを再保険と呼びます。
言うなれば保険の保険です。
保険リスクの負担を分散するために再保険は有効です。
リスクを他の保険・再保険会社とともに分担できるからです。
再保険を利用することで保険リスクは保険・再保険市場全体で負担されることになります。
このようにリスクを市場全体で負担する仕組みである保険ですがこの仕組みに適合しにくいタイプのリスクもあります。
保険・再保険市場全体で見ても大数の法則が効きにくく(よってプーリングによる保険リスクの安定化効果が小さく)かつ発生すれば損害額が多大になるものがそうです。
大きな地震や大きな台風の被害といった大規模自然災害に関わる損害リスクがこれにあたります。
もちろん保険・再保険市場全体で保険金の支払いにまわせる余剰資金が十分にありそのため損害リスクの引き受け能力(キャパシティー)が十分にあるなら少々のことは問題ありません。
しかしながら引き受けのキャパシティーは損害の発生によって変動します。
度重なる大自然災害への保険金支払いによってキャパシティーが縮小し保険・再保険市場での大自然災害リスクの分担が困難になってしまったのが1980年代後半から90年代初頭にかけて起きたことだったのです。
ところが1989年以降この支払い額が急増します。
1989年に米国を襲ったハリケーン・ヒューゴの被害には58億ドル1992年に同じく米国を襲ったハリケーン・アンドリューには183億ドル1994年にカリフォルニア州で起きたノースリッジ地震には135億ドルにも上る保険金の支払いがなされています。
米国だけでなく日本でも1991年の台風19号の被害に65億ドルの欧州では1990年のダリア嵐の被害に約60億ドルの保険金が支払われこの時期全世界で大規模自然災害の被害に対して巨額の保険金が支払われました。
このような巨額の保険金支払いは保険・再保険市場全体の支払い準備を急減させます。
その結果保険リスク引き受けのキャパシティーは減少し大規模自然災害に関する保険・再保険料は高騰してしまいました。
実効ある保険をリーズナブルな価格で提供するためにはリスクを引き受けるキャパシティーを増やすしかありません。
しかし保険・再保険市場ではそれができないのですから他の市場に保険リスクの引き受けを求めることで保険リスクの引き受けキャパシティーを増やすしかありません。
そこで考えられたのが株式や債券が取引される資本市場に保険リスクを引き受けさせることです。
これを実現するために作られた保険リスクを資本市場で取引できるようにする仕組みの一つがCAT債券、いわゆる保険リスクの証券化なのです。
大規模自然災害の保険リスクを資本市場に分担させるというアイデアは両者の市場規模を比較すれば極めて自然に見えて来ます。
資本市場の規模に比べれば大規模自然災害への保険金支払い金額は極めて小さいものですからこの程度の金額が変動するリスクを取ることくらい資本市場全体で見ればたいしたことがないわけです。
さらに保険リスクは資本市場のリスクとの相関が低いという特性を持っています。
台風や地震の発生と株価や金利の変動が無関係であるばかりでなくたとえ一部の地域に自然災害による大きな被害が出たとしても全世界で見た経済活動にはそれほど大きな影響がないからです。
保険リスクが資本市場で取引できるようになればこの変動の相関の低さが資本市場に参加する投資家には魅力的なものになります。
価値の変動が株式や債券の価格の変動と連動しない保険リスク金融商品に投資することで投資全体の収益が変動するリスクを分散し抑えることができるからです。
保険リスクが新たな投資対象に加えられればまさにポートフォリオ理論が教えるところのリスク分散効果の利益を資本市場に参加する投資家が享受できるようになるのです。
このようにリスクを引き受けるキャパシティーの増大を求める保険・再保険市場と分散投資のための新たな対象を求める資本市場の掛け橋となって双方に利益をもたらす役目を果たす仕組みが保険リスクの証券化なのです。
CAT債券(CATボンド)は1994年に初めて登場しました。
わが国でも1997年に南関東地域の大地震を対象とするCAT債券が発行されて以来様々なCAT債券が作られています。
前章でお話しした通り証券化はリスクをコントロールして取引する仕組みの体系ですから保険リスクを資本市場で取引できるようにするための一つの方法として証券化か利用されるのは自然なことです。
細部については様々な違いがありますが典型的なCAT債券の仕組みは証券化の仕組みとほぼ同じです。
第一段階として地震や台風といった大規模自然災害による被害に関する保険契約をひとまとめにしてプールを作り証券化の対象資産を構成します。
次に第二段階としてそれらの保険を売った元受け保険会社もしくはそれらを再保険した再保険会社が対象資産である保険契約のプールの所有権を特別目的事業体に移します。
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